雌性老化マウスがヒト原発性胆汁性肝硬変(以下PBC)のモデル動物となりうるか否かを明らかにすることを目的とした。「方法」マウスはSPF下で飼育した、雌性C57BL/6(Charles River Japan Inc.)で18ケ月齢から26ケ月齢であった。肝組織内浸潤細胞の表面マーカーの同定を酵素抗体直接または間接法で染色後光顕と電顕で行った。6週齢マウスの胆嚢から胆嚢上皮細胞を単離し、24月齢マウスの脾細胞とともに3時間混合培養して、胆嚢上皮細胞と脾リンパ球との関係を観察した。[成積]92%に、門脈域にリンパ球と形質細胞を中心とした円形細胞浸潤を認めた。肝類洞内への細胞浸潤はごく軽度にとどまり、肝細胞の壊死所見はほとんど認めなかった。小葉間胆管を中心に中等度から高度の胆管炎を認め特に46%で胆管は破壊され、一部の胆管は盲端となり消失しており、慢性非化膿性破壊性胆管炎に相当する所見であった。これらの胆管病変は12月齢から出現し始め、18月齢から急激にその頻度が高くなった。なお、24月齢の雄性マウスおよびICRマウスではリンパ球の浸潤、胆管障害の所見は観察されなかった。移入実験を行った9匹中5匹56%で胆管上皮細胞の変性観察された。胆管上皮細胞と接触する細胞はCD8陽性T細胞で、免疫電顕では胆管上皮細胞にBroad contactしていた。胆嚢上皮細胞とContactしているリンパ球はCD4陽性細胞で2.1±2.3%、CD8陽性細胞で18.2±5.1%あった。CD8陽性細胞が胆嚢上皮細胞を障害していることが示唆された。12カ月齢マウスにUDCAを投与すると、6月間コントロールに比べてUDCA群で胆管病変の出現頻度は低下傾向にあったが有意な差違ではなかった。[結論]老化マウスはヒトPBCときわめて類似しており、自然発症モデル動物となることが示唆された。
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