研究概要 |
肝類洞壁細胞は、Kupffer細胞、肝類洞内皮細胞、伊東細胞並びにピット細胞から構成されている。本プロジェクトではKupffer細胞と肝類洞内皮細胞に研究の照準を当てて、これらから産生される内因生活性物質のネットワークの解明を試みた。1)肝類洞壁細胞からのアラキドン酸代謝産物並びに脂肪代謝産物の産生機構:Kupffer細胞は、リポポリサッカライド(LPS),Propionibacterium acnes(P.acnes)死菌或いはOK-432などのbiological response modifiers刺激により、アラキドン酸代謝産物であるプロスタグランジン(PG)E2,6-keto PGF1α、トロンボキサン(TX)B2を産生分泌したが、非刺激状態ではPGD2を主に産生した。さらに、このような刺激を受けると、Kupffer細胞内では、これらPGsの代謝系の上流に位置するサイクロオキシゲナーゼ酵素が強く誘導されることが判明した。また、これらのアラキドン酸代謝産物の生成はKupffer細胞内外のCa並びにカルモジュリンに依存していることも明かとなった。ところで、血小板活性化因子(PAF)も生理活性の強い脂肪代謝産物であるが、Kupffer細胞或いは肝類洞内皮細胞はCa ionophore刺激でPAFを産生することが判明した。2)肝類洞壁細胞からのサイトカインの産生機構:Kupffer細胞は、LPS刺激下でIL-1,IL-6並びにTNF-αを産生した。また、肝類洞内皮細胞もこれらのサイトカイン産生に携わっていることが明かとなった。ところで、一般にマクロファージの活性化因子としてIFN-γが強力な作用をするが、Kupffer細胞もIFN-γによってIL-1やTNF-αなどのサイトカインを産生するようになることが観察された。さらに、これらのサイトカイン産生はPGE1,PGE2或いはPGI2などのアラキドン酸代謝産物共存かでは有意に減少した。これらの結果から、肝類洞壁構成細胞間には、サイトカイン内制御、そしてサイトカイン・アラキドン酸代謝産物間制御のネットワークが形成されていることが示唆された。
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