研究概要 |
Fibronectin receptor(FNR)のβsubunitを,人胎盤よりPytela et alらの方法に従って精製し,この精製蛋白に対するモノクロ-ナル抗体を作成した.この抗体を用いて,以下の検討を行った. (1)正常人血清および肝硬変血清を,FNR抗体結合affinity columnで精製した後,SDSーPAGEにかけ,FNR抗体でWestern immunoblottingを行い,血清中にFNRのβsubunitに一致する95,000daltonsの位置に単一なバンドを認め,FNRが血清中に存在することを明らかにした. (2)antiーFNR抗体を用いたsandwich ELISAによるimmunoreactive FNRの測定法を開発し,各種肝疾患において測定した.その結果,血清FNR濃度は,血清PIIIP(procollagen III aminopeptide)と正の相関と示した.さらに組織学的変化との関係を検討すると,血清FNR濃度は,肝線維化,肝の変性・壊死,門脈域の細胞浸潤の程度,とくに肝線維化と有意な正相関を示した. (3)antiーFNR抗体を用いて,慢性肝炎,肝硬変の肝生検組織を免疫染色とすると,FNRは肝細胞膜,線維化領域,伊東細胞に染色された. 以上の成積より,血清FNR濃度の測定は,肝障害,特に肝線維化の指標として有用であることが明らかとなった.
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