研究概要 |
人好塩基球を,パ-コ-ル濃度勾配法,およびエルトリエ-タ-を用いて,平均2%の白血球分画より,平均85%に分画精製が可能となった。得られた標本に,パッチクランプ法を用いて,その脱顆粒機構を,電気生理学的に検討した。その結果,人好塩基球の脱顆粒は,細胞内のCa濃度に強く依存し,2μM以上のCaにて,明らかな脱顆粒が認められた。次に,この系を用いて,ラットの腹腔肥満細胞などで,脱顆粒を促進すると報告されている,非加水分解性のGTP(GTPーγーS)を適用したところ,脱顆粒のCa感受性が約2倍程度増した。比較検討のため,人末梢血より同様の方法を用いて,好酸式を分画精製した。その標本を用いて,人好酸球の顆粒放出を,同様の方法で検討した。その結果,人好酸球からの脱顆粒は,Ca単独では比較的弱く,GTPーγーSの同時適用により,著明に促進された。以上の結果は,炎症細胞により,その脱顆粒機構には,各々の特徴を有する事を示している。次に,人好塩基球由来の細胞株である,KUー812ーFに,欠損しているIgE受容体の遺伝子の一つである,γ鎖を導入した。その標本を用いて,抗IgE刺激をしたところ,有らかなヒスタミン遊離は観察されなかった。この細胞株では,α鎖が存在し,IgEの結合は,γ鎖およびα鎖で十分とされている。しかに,我々の作製した標本で,ヒスタミンの遊離が認められなかった事は,α鎖,γ鎖以外の因子がヒスタミン遊離の関連している事となる。次年度以降は,人好塩基球及び好酸球標本と比較して,脱顆粒の詳細および細胞内Caの動態を明らかにする予定である。
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