人好塩基球活性化の分子的機序を主に単一好塩基球を用いて解析した。すなわち、末梢血よりelutriator装置およびPercoll非連続密度勾配法を用いて好塩基球を平均86%に分画精製した。得られた単一好塩基球に微小電極を吸引付着させ単一好塩基球の細胞内を任意の溶液で潅流し顆粒放出を促した。顆粒放出および細胞膜のイオンチャンネルの開放はそれぞれ細胞膜容量および細胞膜コンダクタンスの変化として測定した。まず細胞内潅流により引き起こされる顆粒放出に伴う電気的変化を形態変化と対比させる事により好塩基球からの顆粒放出が細胞膜の容量変化により測定し得る事を確認した。つぎに細胞内にCaおよびGTP-γ-Sを適用したが、これらの適用では、細胞膜に明らかなチャンネル電流の出現は認められなかった。また顆粒放出は1-10μMの細胞内Caイオン濃度により引き起こされる事がわかった。この反応はGTP-γ-Sの同時適用により著しく促進されCa2 μMの反応がGTP-γ-S100μM共存下では、約4.4倍に増大することが認められた。次に顆粒放出に対するProtein kinase Cの作用をその特異的阻害剤とされるCalphostin Cを用いて検討した。Calphostin C200nMはCa10μMによる顆粒放出を約70%抑制した。またCa2μMおよびGTP-γ-S100μMによって引き起こされる顆粒放出を約50%抑制した。このとき同時に行った形態的観測の結果では、CalphostinCはCa単独またはCaおよびGTP-γ-Sにより引き起こされる顆粒の細胞内分散を抑制することが示唆された。以上の結果より好塩基球細胞においては、CaおよびGTP-γ-Sは細胞膜のイオンチャンネルの明らかな活性化を伴わずに顆粒放出をきたす事が示された。さらに顆粒放出はCaによって引き起こされ、GTP結合蛋白とProtein kinaseCが顆粒膜の融合に関与している事が示唆された。
|