人好塩基球活性化の分子的機序を主に単一好塩基球を用いて解析した。すなわち、微小電極に吸引付着させた単一好塩基球の細胞内を任意の溶液で潅流し顆粒放出を促した。顆粒放出および細胞膜のイオンチャンネルの開放はそれぞれ細胞膜容量および細胞膜コンダクタンスの変化として測定した。まず細胞内潅流により引き起こされる顆粒放出に伴う電気的変化を形態変化と対比させる事により好塩基球からの顆粒放出が細胞膜の容量変化により測定し得る事を確認した。つぎに細胞内にCaおよびGTP-γ-Sを適用したが、これらの適用では、細胞膜に明らかなチャンネル電流の出現は認められなかった。また顆粒放出は1-10μMの細胞内Caイオン濃度により引き起こされる事がわかった。この反応はGTP-γ-Sの同時適用により著しく促進されCa2μMの反応がGTP-γ-S100μM共存下では、約4.4倍に増大することが認められた。逆にProtein kinase Cの特異的阻害剤とされるCalphostin C(200nM)はCaおよびGTP-γ-Sによって引き起こされる顆粒放出を約50%抑制した。以上の結果より好塩基球細胞においては、CaおよびGTP-γ-Sは細胞膜のイオンチャンネルの明らかな活性化を伴わずに顆粒放出をきたす事が示された。さらに顆粒放出はCaによって引き起こされ、GTP結合蛋白とProtein kinase Cが顆粒膜の融合に関与している事が示唆された。 比較のため人好酸球と人肺胞マクロファージを用いて、いくつかの検討を行った。その結果、人好酸球からの顆粒放出には、Caと共にGTP結合蛋白の存在が好塩基球の場合より重要である事が示された。また人肺胞マクロファージにおいては、その活性化の際に細胞膜のイオンチャンネルの活性化を伴いその活性化が人肺胞マクロファージからのCytokine(TNF)の産生に深く結び付いている事が示された。
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