研究概要 |
1.抗CD3モノクローナル抗体(α-CD3MoAb)刺激による患者末梢血からのエフェクターT細胞の誘導・増殖とその臨床応用 平成3年度における研究成果を基に、本年度は実際の臨床応用を実施した。 a.手術不能非小細胞性肺癌に対する、化学療法と養子免疫療法の併用。 臨床病期IIIb,IVの非小細胞性肺癌15例に対し、標準的化学療法と抗CD3モノクロナル抗体刺激T細胞移入免疫療法を併用し、その治療効果向上について検討した。腫瘍縮小効果においては、併用治療によって、奏功率が75%に向上した。生存期間については、現在経過観察中であるが、養子免疫治療併用により、その延長が期待される。 b.悪性胸水合併進行性肺癌に対する集学的治療。 癌性胸膜炎合併進行性肺癌症例12例に対し、インターロイキン2の胸腔内注入と感作T細胞の移入治療を実施した。その奏功率は75%と良好であった。さらに、胸水のコントロール後、全身化学療法と養子免疫療法を併用した4症例中3症例において、24ヶ月以上の生存期間が達成されており、併用療法の有効性が示唆されている。 c.非小細胞性肺癌術後症例に対する、養子免疫療法。 術後病期I,IIIaを対象に、術後の養子免疫療法を実施し、再発率の低下、生存期間の延長などの効果について検討した。現在のところ、13例が登録されているが、NO-1症例において再発率0%(無治療群45%)、生存期間98週(無治療群45週)と術後に感作T細胞移入治療を実施する意義を認めている。今後さらに症例を増やして検討する。 2.抗TCRモノクロナル抗体刺激によるエフェクターT細胞の誘導・増殖。 本年度、我々はさらに抗TCRモノクロナル抗体刺激を利用した、抗腫瘍エフェクター細胞の誘導・増殖に成功した。基本的には抗CD3抗体刺激エフェクター細胞と同様な免疫学的性質であるが、腫瘍拒絶過程における違いが観察されており、今後、詳細に検討する予定である。
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