研究概要 |
慢性炎症性肺疾患あるいは慢性喫煙刺激において見られるchronic low grade inflammation of the lungsの実態とこれが炎症の進展に及ぼす影響とを,おもにinterleukinー1(ILー1)とその抑制物質に焦点をあてて検討してきた。ILー1は健常人喫煙者,サルコイドーシス,特発性肺線維症などの間質性肺疾患症例の肺胞マクロファ-ジにおいて産生能の増加傾向が認められ,一方ではILー1抑制物質の産生遊離の低下が認められた。この両者のバランスの崩れが,炎症の進展に寄与している可能性について,原著論文として発表した。 肺胞洗浄によって採取したマクロファ-ジの培養上清中に同時に産生遊離されるILー1抑制物質については,その標的細胞としては,マウス胸腺細胞,ヒト肺線維芽細胞の両者を確認した。これらの細胞に及ぼすILー1の作用は,ILー1抑制物質によって,特異的に,著明に抑制された。この抑制物質の分離精製については,透折処理後,Mono Q columnによるイオン交換クロマトグラフィ-によって,少なくともペプチドであろうとの点までの進行状況であり,分子量の決定は今後の問題として残されている。一方,培養上清のゲル濾過画分をもちいて,レセプタ-結合実験を行った結果,この抑制物質はILー1のILー1レセプタ-への結合と競合するレセプタ-・アンタゴニストであることが判明した。同時に,ヒト肺線維芽細胞の上のレセプタ-の数,親和性についての検討でについては,健常人と特発性肺線維症症例の間では差異は検出されなかった。これらは,二つの原著論文に発表(一つは発表,一つは作成中)した。
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