研究概要 |
慢性に経過する炎症性間質性肺疾患、気腫性肺疾患、あるいは慢性喫煙刺激においては、炎症性肺障害とそれに引き続く正常構築の破壊あるいは修復過程の異常としての線維化が臨床的経過を決める上で重要な問題である。これらの過程において、肺胞マクロファージより産生遊離される各種のサイトカインとその抑制物質の産生量・活性でのアンバランスが、慢性炎症の成立・進展を考える上で、ひとつのモデルになりうるのではないかとの発想のもとに、検討を加え、以下の結果を得た。 1.ヒトBAL液マクロファージ培養上清中のIL-1活性、IL-1抑制活性が慢性喫煙刺激あるいは慢性炎症性間質性肺疾患において、健常人非喫煙者と比べて変化が認められた。すなわち、IL-1活性は高値傾向を、IL-1抑制活性は、健常喫煙者15列、サルコイドーシス活動基症例8列、特発性肺線維症9症例において有意に低下を示した。 2.レセプター結合実験によって、このIL-1抑制因子は、IL-1レセプターに結合し、IL-1の結合に競合的な阻害を示した。これは、chemical crosslinking 法を用いて確認された。 3.タンパクレベルでのIL-1レセプターアンタゴニストの産生低下が、病態に関連して遺伝子レベルでもおこっているのかどうかについて、検討を加えた。肺胞マクロファージよりAGPC法で抽出したmRNAを用いて、reverse PCR法にてcDNAを増幅し、これをHPLC法により定量した。G6PDに対する比をとって、比較検討したところ、IL-1βmRNAは健常人と疾患群の間で差異は検出されなかった。しかし、IL-1レセプターアンタゴニストmRNAはIPFおよびサルコイドーシス症例で、健常非喫煙者に比べて、有意に比が低下していた。この所見は、IL-1レセプターアンタゴニスト/IL-1βの比を比較すると、IPF,サルコイドーシスにおいて、比は健常人非喫煙者に比べて有意に低下していた。健常喫煙者では低い傾向を示した。
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