研究概要 |
昨年度までの検討よりNGFの細胞内情報伝達系にガングリオシドGM1(GM1)が特別な関係を有し、特にNGFの機能的受容体であるp140^<trk>の機能をpositiveに制御する生理活性物質である可能性が示唆されたため、本年度はこの点をより詳細に検討した。[方法]1)p140^<trk>に対する特異的抗体(ポリクローナル)を作製し、2)この抗体を用い、PC12Cell、NBー1Cell、ヒト脳よりp140^<trk>を部分精製しそのチロシンキナーゼ活性(TK-活性)に及ぼすGM1の作用をin vitroの系で検討する。3)上記の酵素源よりp140^<trk>に対する抗体で免疫沈降し、その沈降物中にGM1が存在するか否か、また存在した場合αGM1の分子特性を検討する。4)比較検討のため、増殖因子の上皮成長因子(EGF)受容体に対する抗体を用い同様の免疫沈降をしGM1を始めとする他のガングリオシド(Gg)とのassociationの有無を検討する。5)抗GM1抗体を用い上記酵素源からの免疫沈降でp140^<trk>が共沈されるか否かの検討をする。[結果]a)p140^<trk>のC末14アミノ酸残基よりなるペプチドを免疫源とし抗血清を得た。ELISA法による検討より12,000倍以上の高力価を有し、免疫組織化学、免疫沈降、Western blot、免疫複合体Tkー活性測定に使用可能な良質の抗体を得た。b)p140^<trk>のTKー活性はGM1により活性化された。しかし、1mMの高濃度では逆に抑制された。c)p140^<trk>の免疫沈降物にはGM1がassociateしていた。この検出には我々の新たに開発した方法を用いた。d)EGF受溶体にはGM1はassociateしていなかった。e)抗GM1抗体を用いたWesternーblotではp140^<trk>に相当する位置に陽性バンドを検出したがEGF受容体に相当する位置にはバンドはなかった。以上の研究より、GM1はp140^<trk>の生理的調節因子としてその機能調節に重要な役割を果たしており、またp140^<trk>とはかなり強い複合体を形成している可能性が推定された。
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