研究概要 |
1.単一運動単位活動を用いた脊髄神経回路活動の検索のために本研究で新たに開発した方法を用いて,正常人12名(ヒラメ筋で計38運動単位)について反射回路の活動性を検索し,従来から確立されているH反射を用いた方法での結果と比較検討した.(1)対象とした反射回路は抑制回路と促通回路で,それぞれ相反性Ia抑制,異名性Ia促通を用いた.(2)効果の見られた運動単位についてみると,条件刺激効果量はH反射を用いた方法と極めてよく相関し,両者は高い相関係数を示した.(3)条件刺激効果の測定感度はH反射を用いた方法とほぼ同等であった.(4)運動単位によっては効果の全く見られないものもあり,末梢神経からの神経結合が運動単位によって量的にも質的にも異なっていることが明らかにされた.これはH反射では得られない知見である. 2.異名性単シナプス性Ia促通については,大腿四頭筋からヒラメ筋に対するIa結合率をヒトでは初めて明らかにし,結合率は51.3%で,ネコ,猿に比べてやや低い値を示した. 3.相反性Ia抑制の拮抗筋の持続的随意収縮による変化については,従来から抑制量が増加するとする報告と,変化しないとする報告とがあった.その違いを引き起こす原因の一つにH反射が運動細胞群の活動を反映し,個々の運動細胞の活動を必ずしも示さないことにあった.本法により単一運動細胞に対する検索が可能となり,紳粋な神経回路の活動性の変化として抑制量が増加することが解明された. 4.方法論と相反性Ia抑制についての結果を2つの論文にまとめてJournal of Physiologyに投稿した.
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