研究概要 |
本研究の目的は心原性脳塞栓症患者の心内血栓形成における血小坂機能と凝固・線溶能の関与を明らかにするとともに、種々の画像診断法により心内血栓の検出を試み,これらの成積から抗血栓療法の適応決定と治療効果の判定を行う方法を確立することにある。 そこで,研究代表者らは心原性脳塞栓症患者において血小板機能として血小板凝集能,血小板放出因子,凝固系の分子マ-カ-としてアンチトロンビンIII,フィブリノペプタイドA,プロテインC,トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)、線溶系の分子マ-カ-としてプラスミン・α_2プラスミンインヒビタ-複合体(PIC)、Dダイマ-を測定し,心内血栓検索のため経胸壁・経食道心エコ-,心造影CTを施行した。その結果、心原制脳塞栓症患者では血小板機能よりも凝固線溶能の異常が優勢であり、特にTATとDダイマ-が最も鋭敏に変動した。画像診断では,急性心筋梗塞,心室瘤,心筋症による左室血栓の検出には経胸壁エコ-が有用であったが,心房細動による左房血栓の検出には経食道エコ-の方が優れていた。心造影CTはどちらの血栓の検出にも有用であった。ワ-ファリン療法に関しては、人工弁置換患者や僧帽弁狭窄と心房細動の合併例などの高リスクの群ではトロンボテスト20%(INR2)以下のコントロ-ルでも再発を生じており、更に厳しい目標値の設定や抗血小板薬の併用が必要と考えられた。また,ワ-ファリン療法後,分子マ-カ-のうちTAT,PIC,Dダイマ-が鋭敏に低下し、治療の指標として有用と考えられた。 今後は更に多数の治療例について追跡調査し、塞栓の高リマス群と低リスク群においてTAT,Dダイマ-,INRと脳塞栓再発の関係について解析する予定である。
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