研究概要 |
Duchenne型筋ジストロフィー及びmdxマウスでは筋細胞膜の裏打ち蛋白であるジストロフィンの欠損があることが示されている。生理学的には,mdxマウスで膜電位が低下した筋線維があることと,26℃以下の低温でmdxマウスの横隔膜標本で約30%の筋線維に電気的ミオトニーが起ることを我々が1990年に報告した。これらの生理的異常を改善する薬物を見出す治療開発の目的で本研究を行った。 今回の補助金によって購入したX-Yレコーダーを現有設備に加えることによって筋細胞内記録をメモリーオシロスコープより速やかにぺン書きすることができるので,dataの計測が容易になった。 薬物としては平成3年度はベスタチン,メキシレチン,ジフェニルヒダントインを用いて,mdxマウスの横隔膜標本を対象に微小電極法により筋細胞内記録を行った。低下して膜電位の改善がこれらの薬物の中ではベスタチンとメキシレチンに認められた。電気的ミオトニーは上記三つの薬物すべてに抑制効果のあることが明らかとなる。 1991年にBertoriniらによりダントロレンNaがDuchenne型筋ジストロフィー患者にCKを低下させ,筋力低下の進行を抑制する効果があるという報告があった。平成4年度はダントロレンNaを10mg/kg/日mdxマウスの腹腔内投与を2週間行って筋細胞膜の異常が改善されるか否かを検討した。ダントロレンNaを10mg/lの濃度でTyrode液に加えて,横隔膜標本に対するin vitroの効果もみたが,膜電位の改善はなく,又電気的ミオトニーも抑制しないことが明らかになった。ダントロレンNaは筋弛緩剤として興奮連関阻止をして筋力低下も起すので,ジストロフィー筋にとっては筋力低下というマイナスの効果があるので投与は慎重を要する。(結語)上記4つの薬物ではベスタチンとメキシレチンの2剤が,膜電位の低下を改善し,mdxマウスの電気的ミオトニーを抑制した。
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