研究概要 |
MRI T2強調画像における側脳室周囲高信号域(PVH)は、加齢、虚血性脳血管障害そして痴呆と関連があるとされているが、その背景にある病態生理学的状態と臨床的意義についてはまだ明かにされていない。そこで、PVHの病態生理学的意義と痴呆との関連について脳循環代謝面からの研究を行った。 MRIで皮質には病巣を認めないが、基底核部や白質に多発性の病巣を認める多発性脳梗寒患者28例を対象とした。このうちMRI T2強調画像においてPVHを認める15例をPVH(+)群、認めない13例をPVH(-)群とした。神経心理学的検査を行ない知的機能について評価した。ポジトロンCTを用いて ^<15>O_2,C^<15>O_2持続吸入法により脳血洗量(CBF),脳酸素抽出分画(OEF),脳酸素消費量(CMRO_2)を測定し、 ^<11>COにより脳血液量(CBV)の測定を行った。 PVH(+)群におけるCBFの低下とOEFの増加は、非痴呆例においてもPVH領域と前頭葉帯状回領域で認められ、痴呆例においてはPVH領域と各皮質領域でのCBFの低下と、PVH領域及び前頭葉を中心としたCMRO_2の低下とOEFの増加を認めた。PVH(+)群におけるPVH領域と各皮質のCBF/CBVは低下する傾向を認めた。 これらの結果は、多発性脳梗室例にみられるPVHの背景には脳動脈硬化性変化に起因すると思われる脳虚血状態のあることを示していると考えられる。そして、この脳虚血状態は皮質にも存在することを示している。脳虚血の状態が持続することにより神経細胞の機能低下が非可逆性のものとなり、痴呆の発現することが推測される。
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