研究概要 |
脱髄疾患などの視覚伝導障害には(1)伝導ブロック(2)伝導遅延(3)疾労などの異なる機序があるとされる。潜在的な視覚伝導障害を有効に検出するための検査法の開発を我々はすすめてきた。この目的から,パターン反転二発刺激法を開発し,脱髄疾患をはじめとする臨床例に応用するのが本研究の最終目的である。この目的を達成するため平成3年度にはパターン反転二発刺激法の検査プロトコールを検討したが,この平成4年度には定性的・定量的な分析を詳細に加えた。対象例数は健康成人50例である。パターン反転全視野単眼刺激で(a)パターン反転単発刺激と(b)パターン反転二発刺激を行った。刺激間間隔は40〜180msecの範囲内で8種類とした。(b)二発刺激による誘発電位Bから(a)単発刺激による誘発電位Aを差し引いた反応から二発目の刺激に対する誘発電位X(B-A)を求めた。このような方法で網膜電図(ERG)と視覚大脳発電位(VEP)の二種類を測定し,それぞれの潜時と振幅を定量的に計測した。反応Aの潜時または振幅と,反応Xの潜時または振幅の比較はpaired t-testで行った。刺激間間隔(ISI)が短いほど反応Aと反応Xの差は大きく,ISIが180msecに近づくにつれ,その差は少なくなった。反応Aと反応Xの差,反応Xの回復傾向いずれも統計学的に優位であった。ERG,VEPいずれのピーク潜時も,反応Xが反応Aより有意に長く,ISIの延長につれて有意な回復傾向を認めた。(ERGのa(p),b(p),c(p);VEPのP50,N75,P100,N145)。ERGのb(p)振幅およびVEPのN75振幅については反応Aの振幅は反応Xの振幅より有意に小さく,ISIの延長につれて両者の差は短縮した。ERGのc(p)振幅,VEPのP100振幅,N145振幅については反応Aの振幅は反応Xの振幅より有意に大きく,ISIの延長につれて両者の差は短縮した。これらの結果は内外を通じて初めて得られた成果である。
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