研究課題/領域番号 |
03670431
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
甲谷 哲郎 北海道大学, 医学部附属病院, 助手 (70205350)
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研究分担者 |
川口 秀明 北海道大学, 医学部附属病院, 助手 (70161297)
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キーワード | 肥大心 / 高血圧 / SHR / 突然死 / 虚血性不整脈 / 肥大退縮 / 降圧薬 / アンジオテンシン変換酵素阻害薬 |
研究概要 |
本研究の目的は、作用機序の異なる降圧薬を慢性投与し、その降圧作用あるいは肥大退縮効果が、虚血急性期の致死的不整脈発生の防止になり得るか否か、またそのメカニズムについて検討することである。前年度は、既に心肥大を生じている12週齢の高血圧自然発症ラット(SHR)をcaptoril投与群(SHR-C)、hydraladine投与群(SHR-H)、薬剤非投与群(SHR)の3群に分け、さらに正常血圧群としてWystar-Kyoto rat(WKY)を用い、ランゲンドルフ還流心に冠動脈結紮を加える急性虚血実験で不整脈(VF、VT)を検討した。その結果、肥大退縮の見られたSHR-C群では不整脈が減少し、正常群(WKY群)と差がなくなったのに対して、肥大退縮が見られなかったSHR-H群では、不整脈出現は防止できなかったことを報告した。今年度は引き続き、さらにそのメカニズムを解明するため、微小電極法を用いて、酸素化および虚血類似条件下(低酸素・無グルコース)での左室乳頭筋の活動電位を記録することにより、虚血期における電気生理学的特徴を比較検討した。その結果、酸素化条件下では肥大心(SHRおよびSHR-H)は正常心(WKY)に比して、活動電位幅(APD)が延長しており、一方、肥大退縮心(SHR-C)のAPDはWKYと同程度であった。虚血類似条件下では、APDは肥大心(SHR、SHR-H)では5分後から著明に短縮したが、肥大退縮心(SHR-C)ではAPDの短縮率は小さかった。以上の結果は、肥大心では虚血領域と健常部でのAPDの不均一性が増大していることを意味し、リエントリーによる不整脈を起こし易いと考えられた。一方、肥大退縮心では虚血時におけるAPDの短縮率が低下し、同時に致死的不整脈が著減した。これは、肥大心でみられた虚血時の電気的不均一性が改善されたためと考えられた。以上より、単なる降圧のみでは虚血期の不整脈は防止できず、降圧に加えて肥大が退縮することが必要であることが示された。
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