研究概要 |
1.これまで用いてきたpatch clamp装置と新しい分光蛍光測定装置により膜電位・膜電流の測定と蛍光色素(Furaー2)を用いた細胞内Ca濃度(〔Ca〕i)の測定が同一標本から行いうるシステムが完成した。まがwhole cell recordingにより活動電位の発生やvoltage clamp下でのCa電流活性化に伴う細胞内Ca濃度の変化について基礎的なデ-タを得る事ができた。平成3年9月からは〔Ca〕iとsingle channel currentの同時連続記録も可能となり,現在順調に稼動している。 2.〔Ca〕iの増加に伴うCa電流の調節機構をsingle channelのレベルで検討するために〔Ca〕iを安定してコントロ-ルしうる条件を検索した。 細胞灌流液を140mM K+とし膜電位をほぼOmVに脱分極させた上でCa^<2+>とEGTAの量を調節することにより50nMから1μM程度までの〔Ca〕iの値が記録された。 3.この方法により〔Ca〕iをコントロ-ルしながらcell attach法により Lーtype Ca single channel currentの記録を行うと,〔Ca〕iが数100nM程度に上昇する条件下でchannelの開口確率の可逆的な上昇が観察された。この〔Ca〕i値は1.8mM Caのnormal Tyrode液でKーdepolarizationにより-20mV付近へ細胞を脱分極させた際の〔Ca〕iに対応し生理的にも十分な意義を持ち得ると考えられる。 4.この際のCaチャネルの開口確率の上昇の機序としてはチャネル蛋白の燐酸化の関与が示唆されるため,Caーcalmodulin dependent kinase2やAーkinaseについての検討を開始した。 5.なお2.で述べた〔Ca〕iの制御を検討している段階でジギタリスが〔Ca〕i変動とは独立に直接Ca電流を増強させる効果を持つ可能性が示唆された。この点も本研究より派生した主題として検討を加えて行きたい。
|