研究概要 |
先に提出したプロトコ-ル,すなわちコクサッキ-B1ウイルスにより心筋炎を生じさせたC3H/Heマウスに,中和抗体が殆ど検出されなくなる90日後に,コクサッキ-B3ウイルス,encephalomyocarditisウイルスを再感染させた。これらのウイルスのうち,コクサッキ-B1ウイルストコクサッキ-B3ウイルスは,Tリンパ球に対する共通認識部位を有する蛋白を有することが証明されている。また,ageーmatchさせたC3H/Heマウスにコクサッキ-B3ウイルス,encephalomyocarditisウイルスを感染させ,それぞれのウイルス群で,先にコクサッキ-B1ウイルスを感染させたマウスの心筋炎の程度と,先にコクサッキ-B1ウイルスを感染させていないマウスの心筋炎の程度を比較検討した。心は10%ホルマリンにて固定後H・E染色を行い,細胞浸潤・心筋壊死・右灰化の程度を半スコア-化とした。その結果,先にコクサッキ-B1ウイルスを感染し,さらにコクサッキ-B3ウイルスを重複感染されたマウスで,コクサッキ-B3ウイルスのみを感染させたマウスに比し心筋炎の程度は増強した。さらにencephalomyocarditisウイルス感染マウスでは,先行するコクサッキ-B1ウイルス感染の有無によって心筋炎の程度は不変であった。すなわち,一度コクサッキ-B1ウイルスをメモリ-したTリンパ球が,共通のウイルス・エピト-プを認識し,encephalomyocarditis群以外で,組織障害性に働き心筋炎の程度を悪化させたことが判明した。今後は臨床生検材料をもとに腸管系ウイルスのゲノムの存在を証明する予定である。
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