ウイルス性心筋炎における抗体依存性再感染と、重複感染による障害性T細胞の誘導

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670445
• 研究機関: 富山医科薬科大学
• 研究代表者: 岸本 千晴 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (70169845)
• 研究分担者: 黒川 昌彦 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (80186527) ; 落合 宏 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (30018692)
• キーワード: ウイルス性心筋炎 / 拡張型心筋症 / 抗体依存性再感染 / 重複感染 / ウイルスゲノム

研究概要

先に提出したプロトコール、すなわちFcレセプターを介したマクロファージでの抗体依存性感染と、他の腸管系ウイルスによる二次感染の可能性を検討した。つまり、今までは防御的に働くとされていた抗ウイルス抗体を介した感染の増強が、心臓内炎症細胞であるマクロファージを介して発生していること、および他のウイルスによる重複感染により細胞障害性T細胞が誘導され、心筋炎の増悪がもたらされることが判明した。
一般に心筋炎の心内病巣にはマクロファージおよびTリンパ球が存在することが以前より判明していたが、今回の我々の検討より、マクロファージは液性抗体から、またTリンパ球は細胞性免疫の側より主に心筋炎を増悪させていたことが判明した。
以前より提案されていた拡張型心筋症患者での血中ウイルス抗体価の上昇、心筋生検よりのTリンパ球の集ぞくおよびウイルスゲノムの存在を裏付けたものと思われる。現在は各ウイルスゲノムの存在を実験的に証明する試みを行っている。すなわちコクサッキーB3ウイルスおよび他の腸管系ウイルスに特異的なプローベを作成中である。本研究を行った後は、臨床生検材料からウイルスゲノムの存在を証明する予定である。心筋炎・拡張型心筋症・肥大型心筋症および二次性心筋疾患などの患者の生検材料をもとに通常の病理学的な検索の他、コクサッキーB3ウイルス、コクサッキーB1ウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、インフルエンザウイルスなどcardiotropicなウイルスゲノムの存在をPCR(polymerae chain reaction)法で行いつつある。

研究成果

• [文献書誌] Yuji Hiraoka: "The effects of FK-506,a novel and potent immunosuppressant,upon coxsackievirus B3 myocarditis." J Pharm Exp Ther. 260. 1386-1391 (1992)
• [文献書誌] Hitoshi Takada: "Therapy with captopril regresses myocardial hypertrophy in chronic stage of myocarditis." Circulation. 86. II 196- (1992)
• [文献書誌] Yuji Hiraoka: "Effects of polyethylene glycol conjugated superoxide dismutase on coxsackievirus B3 myocarditis in mice." Cardiovascular Reseach. 124. 956-961 (1992)
• [文献書誌] Yuji Hiraoka: "Role of oxygen-derived free radicals in the pathogenesis of coxsackievirus B3 myocarditis in mine." Cardiovascular Research. (1993)
• [文献書誌] Chiharu Kishimoto: "The effects of Lobenzarit Disodium upon coxsackievirus B3 myocarditis in mice." Cardiovascular Reseach. (1993)
• [文献書誌] Schinitt S.T.: "Fibrin deposition in murne coxsackievirus B3 myocarditis." Circulation Research. (1993)
• [文献書誌] Chiraru Kishimoto: "Analysis of the pathogenesis of coxsackievirus B3 myocarditis.in The Cardiomyopathic Heart" Raven Press,New York, (1993)