ラットの心室筋細胞にFuraー2 AM(5μM)とBCECF AM(0.5μM)を同時に負荷し、[Ca^<2+>]iは340/380nm、pHiは490/450nmでの励起時の蛍光強度比より、Furaー2とBCECFのDualーloading法による同一細胞における[Ca^<2+>]iとpHiの同時測定法を確立した。この[Ca^<2+>]iとpHiの同時測定法により、[Ca^<2+>]iとpHiはお互いに関与していること、及び低酸素潅流中には[Ca^<2+>]iは上昇し、pHiは低下するが、低酸素中の細胞障害においてはpHi低下より[Ca^<2+>]i上昇が重要であることを報告した。虚血時にはNa^+/K^+ポンプ抑制による[Na^+]i上昇を介したNa^+/Ca^<2+>交換により[Ca^<2+>]iの上昇を、再潅流時にはNa^+/H^+交換を介したNa^+/Ca^<2+>交換により[Ca^<2+>]i上昇をきたす可能性が示唆されている。しかし、虚血/再潅流時の[Ca^<2+>]i上昇の機序の解明において重要な虚血時の[Na^+]iに関しては、報告が一致していない。我々は、ionophoreであるgramicidinを用いて、Na_<max>及びNa_<min>を求めてin vivo較正曲線を作成し、心室筋細胞の[Na^+]iの測定法を確立した。モルモットの静止心室試細胞の[Na^+]iは8.4±0.5(平均±SE)mMであり、イオン選択性電極やNMR法による方法とほぼ同様の値を得た。また、超高感度テレビカメラを用いた画像解析法により、[Na^+]iの細胞内分布は均一であることを示した。一方、Na^+/K^+ーATPaseの阻害をするジギタリス剤であるストロファンチチジン(100μM)の潅流30分後には、桿状細胞の比率はコントロ-ルの65%に減少し、[Na^+]iは14.3±0.7mMに上昇した。また、ストロファンチチジンの潅流中の[Na^+]iと細胞長径の短縮率との間に有意な正相関を認めたことより、[Na^+]iと細胞障害との関連を示唆した。この両者の関連性の機序としては[Na^+]iの上昇がNa^+/Ca^<2+>交換により[Ca^<2+>]i上昇をきたした可能性が示唆されるため、同一細胞における[Na^+]iと[Ca^<2+>]iを同時に測定すことが病態の解明に重要と考えられる。また、無グルコ-スでのシアン(2mM)潅流による低酸素時の[Na^+]iは、コントロ-ルの7.4±0.6mMより30分後に15.3±2.3mMと上昇することを観察した。
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