研究概要 |
1.モルモットの心室筋細胞に5μMのSBFI/AMと10μMのfluo-3/AMを加え、[Na^十]iは340/380nmの波長で励起時の蛍光比、[Ca^<2十>]iは500nmで励起時の蛍光像を求めた。[Na^+]iの較正曲線は10μMのgramicidinにより[Na^十]iを任意の濃度に変化させ、各々の蛍光比より作成した。[Ca^<2十>]iはcontrolの蛍光強度との%変化を用いた。[Na^十]iを5-30mMに変化させた時の蛍光比はDual-loading法を行った細胞群とSBFIを単独で負荷した群で差はなく、500nmで励起したfluo-3の蛍光強度も単独負荷群と差を認めなかった。よって、Dual-loading法により、単離心室筋細胞の[Na^十]iと[Ca^<2+>]iの同時測定が可能であることが示された。2.心筋細胞においてCa^<2+>過負荷はジギタリス中毒や虚血/再潅流障害の重要な因子として注目されている。我々は、ストロファンチジン(Str.)投与時の[Na^十]i、[Ca^<2+>]iと細胞形態の変化を同時に測定し、細胞障害の機序を検討した。10,100,500μMのStr.を40分間潅流後に、心室筋細胞の[Na^十]iはcontrolの7.9±0.4mM(mean±SE)から10.4±1.7,16.7±1.4,19.6±1.8mMに、[Ca^<2十>]iはcontrolの102±7,193±50,361±69%にそれぞれ用量依存性に,かつ時間依存性に上昇した。桿状細胞の比率はcontrolの100,86,80%に低下した。Str.による[Na^+]i,[Ca^<2十>]iの上昇は、1μMのhexamethylene amilorideの投与により、ともに抑制された。1μMのryanodineの投与では[Na^十]iの上昇は影響されなかったが、[Ca^<2十>]iの上昇が抑制され、細胞の自動収縮運動は消失し、細胞拘縮も遅延した。以上より、Str.によるNa^+/K^十-ATPaseの阻害とNa^十/H^十交換機構を介するNa^+の流入による[Na^十]iの上昇が、引き続く[Ca^<2+>]iの上昇をきたして細胞障害の原因となることが示された。また、筋小胞体からのCa^<2+>の遊出は、細胞の自動収縮運動を起こして細胞障害を促進させることが示唆された。
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