研究概要 |
心筋の肥大を示し、その後心不全に陥るモデルとして、心筋症ハムスターとモノクロタリンによって誘発される右心不全モデルがある。これらのモデルにおけるプロテインキナーゼCを活性化する生理的物質1,2-ジアシルグリセロール(DG)の変動を測定した。この物質の心筋含有量は加齢とともに減少し、心筋症ハムスターでは、30日齢では1,2-DGが19%上昇し心筋症の進展に関与する可能性が示唆されたが、90日齢では変化がなくなり、心不全が進行してくる160日、240日齢に各々20%、40%徐々に減少し、心不全時の細胞内情報伝達機構の異常が考えられた。同時に心筋の脂質量の減少も観察され、リン脂質やトリグリセライドの脂肪酸構成の変動と1,2-DGの脂肪酸構成の変動が似て、心不全時の全般的な脂質代謝の異常が考えられたが、なかんずく、1,2-DG量の減少が対照群の半分以下と著明であり、心不全の程度とより相関が示された。また同様に、ラットにモノクロタリン投与によって、右室肥大が形成される時期の2週目では右室筋のみの55%の1,2-DGの上昇が認められるが、右心不全が起こってくる第4週目になるとかえって右室筋の1,2-DGが減少を示し、心筋症ハムスターでみられた左室筋と同様の結果を得た。しかし左室筋では対照群との差はみられなかった。また、1,2-DGに含まれる1,2-DGの脂肪酸組成には差がなかった。
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