研究概要 |
肥大と心筋1、2-ジアシルグリセロール(DG)量との関係を研究した。高血圧自然発症ラット(SHR)は高血圧発症以前(4週齢)より肥大が認められ、心筋1、2-DG量はWKYに比べ31%上昇していたが、加齢にしたがい1、2-DG量の差はなくなった。これはRNA量の変化と一致していた。心肥大の退縮が期待されるアンジオテンシン変換酵素阻害薬であるエナラプリルで1、2-DGの低下させる効果がみられたがα遮断薬では認められなかった。心肥大につづいて心不全がおこるBio14.6ハムスターとモノクロタリン投与ラットにおいては、心肥大前あるいは心肥大期に1、2-DGの増加と、心不全期の1、2-DGの減少が観察された。モノクロタリン投与ラットでは肥大が生じる右室のみで変化がみられた。しかし、サイロイドホルモン投与による心肥大では、心筋RNA量が増加しているにもかかわらずむしろ1、2-DGは減少した。蛋白質合成阻害薬によるRNAの上昇と1、2-DGの減少を考えるとサイロイドホルモンによるRNAの上昇は、1、2-DGの減少を来たし、1、2-DGの減少によってプロテインキナーゼCの活性化を弱めるというフィードバック機構が考えられた。以上の様に心肥大として1,2-DGは密接な関係にあると結論した。
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