研究分担者 |
小川 智 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
和中 明生 大阪大学, 医学部, 助手 (90210989)
北川 一夫 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
半田 伸夫 大阪大学, 医学部, 助手 (80228676)
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研究概要 |
砂ネズミの一過性前脳虚血モデルでの検討により、研究者らの見いだした「虚血耐性現象」の分子メカニズムを究明することは、虚血性神経細胞障害の病態究明に新たな視点を提供するのみならず、より普遍的なストレスに対する細胞応答現象のメカニズムの究明にも資するところが大きいものと思われる。平成3年度の研究を通じて、海馬CA3細胞や視床、線条体、脳皮質などの神経細胞にも「虚血耐性現象」が発現することが明らかとなり(Brain Res 561:203ー211,1991)、本現象が中枢神経系の神経細胞に普遍的に認められる現象であることが強く示唆された。また、虚血以外にも、熱ショックストレスを予め加えておくことにより耐性が誘導されることを証明(J Cereb Blood Flow Metabol 11:449ー452,1991)。さらに、これまでの検討や本年度の検討により活性酸素などのラジカル産生が砂ネズミモデルの虚血負荷の重要な要素であることを示してきたが(Neuroscience 35:551ー558,1990;Life Sci,in press,1992)、CuーZn型の活性阻害剤(diethyldithiocarbamate)による非致死的ラジカルストレスによっても、致死的虚血負荷に対する耐性が誘導され、本現象がMn型SODの誘導や熱ショック蛋白質の発現と関連することが示唆された(J Cereb Blood Flow Metabol 11:S634,1991)。また、虚血負荷に引き続いてのシナプス再生現象の存在を証明する(Neuroscience 46:287ー299,1991)のみならず,新に確立した脳浮腫モデルでの検討(Acta Neuropathol 82:164ー171,1991)を土台として、虚血性神経細胞障害に伴う遅発性の二次的血液脳関門の破綻を見いだし、in vivoでの負荷応答現象を解明する際に神経細胞、グリア、血管内皮細胞間の相互作用の重要性を示唆する結果を得ている(Acta Neuropathol,in press,1992)。今後、虚血耐性現象の分子メカニズムの究明を押し進める上でも本年度に得られた上記検討結果はきわめて重要と思われた。
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