アンジオテンシンIIによる圧受容体反射に対する修飾のおこる機構を解明する目的で、この現象における延髄腹外側部のアミノ酸性神経伝達物質の関与を脳微小透析法を用いて評価した。 まず、非昇圧量のアンジオテンシンIIの存在下で圧受容体反射の感受性は明らかに低下し、この際延髄腹外側部からのグルタミン酸とグルシンの放出が増加した。さらに、グリシンの同部への注入によりアンジオテンシンIIの注入時と同様の圧受容体反射の減弱が観察された。アンジオテンシンIIの中枢性作用にアミノ酸性の神経伝達物質が関与していることが示唆された。 一方、微量の変換酵素阻害薬投与時には、延髄腹外側部のグルタミン酸放出量の減少が認められる。変換酵素阻害薬による血圧下降が消失する程度の非昇圧量のアンジオテンシンIIの持続的補充下では、グルタミン酸放出の変化が対照に近づく事から、このグルタミン酸の減少は変換酵素阻害薬によるアンジオテンシンIIの減少に依存したものである。次に、この減少したグルタミン酸を延髄腹外側部で生理的量で補充すると、血圧下降の最下点は変わらないが、血圧の原値への復帰が促進される。 このように、変換酵素阻害薬は血中のアンジオテンシンII濃度の低下を介して、延髄腹外側部のアミノ酸性神経伝達物質の放出量の変化を来し、反射性頻脈の出現を抑制させる事が示唆された。
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