研究概要 |
圧負荷に対する適応一破綻(心不全)過程における単離心筋細胞内遊離Ca(Caトランジエント)の特徴を明かにするため6週令SDラットにモノクロタリン(60mg/kg)を投与後1,2,3ー4W後に右室心筋より心筋細胞を分離し,Caトランジエント(CaーT)を測定した。(1)1W後(ごく軽度の右室肥大期)にはCaーTのamplitude,max+dCa/dt,maxーdCa/dtが増大し,resting ratio,T80L(peak lightよりamplitudeが80%減少する時間)は不変であった.(2)2W後(有意な右室肥大を認めるが心不全は認めない時期)にはamplitude,restingratioはコントロ-ルと有意な変化を認めなかった,max+dCa/dt,maxーdCa/dtは有意に増大し,またT80Lは有意に延長した。(3)3ー4W後(心不全を伴う著明な右室肥大を認める時期)には,amplitudeは有意に減少し,T80Lは更に延長した.しかし,resting ratio,max+dCa/dtmaxーdCaldtはコントロ-ルと有意差を認めなかった.また,心不全を伴う心筋細胞(3ー4W後の心筋細胞)のCaーTに対するβ刺激剤(isoproterenol)とPDE阻害剤(Eー1020)の効果も検討した.ISO,PDE阻害剤共にamplitude,maxーdCa/dtを用量依存性に増大させた.Peak ratioを50%増加させるISO,PDE阻害剤の濃度はそれぞれ1.6X10^<ー9>M,2x10^<ー6>Mであった.更に,両薬剤共に用量依性にT80Lを短縮された.更に,両薬剤のCaーTの各種パラメ-タ-に対する効果を検討した結果.ISOはPDE阻害剤よりpeak ratioに対する作用がより強く,一方,PDE阻害剤はISOよりmaxーdCa/dtに対する作用がより強いことが判明した.本研究において圧負荷肥大心の適応ー破綻過程の単離心筋細胞のCaーTの特徴を初めてISOはPDE阻害剤よりも収縮能に対して,一方,PDE阻害剤はISOよりも拡張能を改善する作用が強いことも明かとなった.
|