1.血管平滑筋の種々のKチャネルの特性の検討および2.Kチャネルと収縮との関係:今回の検討では、ブタ冠動脈平滑筋培養細胞の約30psのコンダクタンスを有するKチャネルに対するKチャネル開口薬、抑制薬、種々のイオン、ATP等の影響を検討した。Cromakalim、Pinacidilは細胞内外からKチャネルを活性化し細胞内ATPは抑制した。また、本チャネルの活性は細胞外液のCa^<2+>、Mg^<2+>濃度を減少させると抑制され、4APにより完全にブロックされた。一方、培養液中にEDTAを加えると、平滑筋細胞の収縮現象や膜の脱分極現象がみられ、4APにより、この収縮が増強、Nicorandiにより軽快した。これらの結果は本チャネルが静止膜電位や平滑筋の収縮現象に関与しているATP感受性Kチャネルである可能性を示唆している。 3.冠動脈平滑筋のイオン電流に及ぼす諸種薬剤の影響:内因性の血管作用物質、エンドセリン、バソプレッシンは、ブタ冠動脈平滑筋のATP感受性Kチャネルを濃度依存性に抑制した。また、これらの作用はKチャネル開口薬であるNicorandilにより逆転した。Furaー2を用いた細胞内Ca^<2+>濃度の測定では、エンドセリンは細胞内遊離Ca^<2+>濃度を上昇させ、Nicorandiは上昇したCa^<2+>濃度を前値に復した。また、wholeーcell clamp法による膜電位の測定では、静止膜電位の脱分極をもたらした。これらの結果は、上記内因性血管作用物質が冠動脈平滑筋細胞のATP感受性Kチャネルを介して、血管の収縮や緊張度を調節してる可能性を示唆している。
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