交感神経系は血管平滑筋の収縮や拡張を制御し血管抵抗や組織代謝に関与しているがその平滑筋側の受容体にαアドレナリン受容体(α AR)があり、その亜型にα1、α2がある。高血圧等ではより末梢の抵抗血管での交感神経系の役割が大血管より重要にもかかわらず抵抗血管でのα ARの検討は非常に少なくしかもin vivoの検討である。末梢血管ではα ARの亜型の血管部位による分布の差が実験結果に影響を与えるので細動脈を単離しin vitroに検討することで、より末梢の細動脈の影響を受けることなくα1、α2の亜型の収縮拡張の制御への関与の検討が可能となる。今回高血圧症における抹消抵抗血管のα ARの亜型の感受性をSHRの高血圧発症前期(4-5週)、初期(7-8週)を用いin vitroにて検討した。さらに高血圧にて抹消血管抵抗が変化しているのであればmyogenic response(MR)にも変化がある可能性がありさらにはα ARとの関連にも変化を来すと思われる。そこで高血圧前期と初期のSHRにおける抵抗血管のMRに対するα ARの亜型の関連を検討した。高血圧初期のみならず前期からすでにα1の収縮に対する感受性の亢進がWKYに比して認められた(即ちα2遮断薬存在下のNorepinephrine(NE)濃度反応曲線(CRC)ではSHRがWKYに比し左方移動していた)。α2ではSHR、WKYの各時期とも両群間に差はなかった。次にα toneのないbasal toneでは7-8週の初期のSHRにおいてWKYに比し血管内圧上昇に対する収縮反応は大であった。各α遮断薬存在下のNEによる各α tone下にMRを検討した結果MRに対するαの亜型ではWKY、SHRともα2がより反応した。α1では各群間で差はなかったがα2では4-5週、7-8週ともにSHRにおいて圧上昇に対する収縮反応は大であった。これはMRにα2が感受性が高いためと思われた。以上よりそれぞれのαの亜型の感受性の亢進やMR反応の亢進は高血圧前期より生じており高血圧発症の一因子の可能性が示唆された。
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