ブタ大動脈より内皮細胞(擦過法)と平滑筋細胞(explant法)とを得てそのアンジオテンシン(ANG)II産生能について検討した。 方法;各々の細胞を径35mmのwellに5万個ずつ播種し10%牛胎児血清を含む培養液(DMEM)で培養し、コンフルエントに達した後、培養液を無血清のDMEM(pH7.4)に置換した。基質としてANG1とブタに特異的配列を持つテトラデカペプチドレニン基質(14RS)、を添加し37℃で1時間培養後、塩酸酸性として反応を停止し、上清を取り逆相カラムで抽出後ラジオイムノアッセイで定量した。ANGII産生酵素の阻害薬としてカプトプリル(CAPT)、キモスタチン(CHYM)、を用いてそれぞれの産生経路についても検討した。 結果;ブタ大動脈内皮細胞(PAEC)ではANGIからIIへの変換能が高く、CAPTで90%以上抑制されたがCHYMでは抑制されなかった。CAPTによるIC_<50>は10^<-9>Mであった。14RSからのANGII産生はCAPTの影響を受けずまたCHYMでもほとんど抑制され無かった。ブタ大動脈平滑筋細胞 (PASMC)でもPAECと同様ANGIからIIへの変換能が高くCAPTで濃度依存性に抑制された。14RSからのANGII産生はCAPTの影響を受けずまたPAECの場合と同様にCHYMでの抑制は軽度であった。 結論;ブタ大動脈由来の細胞においては内皮細胞、平滑筋細胞共にアンジオテンシン変換酵素活性を示した。これらの細胞において、14RSからのANGII酸性はANG変換酵素阻害薬によって抑制されず、従来用いてきたラット大動脈やウシ肺動脈由来の細胞の場合と異なり、キモスタチンに対し抵抗性を示した。従ってANG変換酵素を介しないANGII産生に寄与する酵素については種により異なることが考えられた。
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