研究概要 |
ウシ肺動脈由来内皮細胞(CPAE)、ラット大動脈由来平滑筋細胞(AIO)及び、ブタ大動脈より内皮細胞(PAEC;擦過法)と平滑筋細胞(PASMC;explan法)とを得てそのアンジオテンシン(ANG)II産生能、プラジキニン(BK)産生能について検討した。 方法;各々の細胞を径35mmのwellに5万個ずつ播種し10%牛胎児血清を含む培養液(DMEM)で培養し、コンフルエントに到達後、無血清のDMEM(pH7.4)に置換した。基質(ANGI,トリデカペプチドレニン基質(13RS)、テトラデカペプチドレニン基質(14RS)、ウシ低分子キニノーゲン(KNG))を添加し37゚Cで1時間培養後、上清を取り逆相カラムで抽出後ラジオイムノアッセイで定量した。ANGII及びBK産生酵素の阻害薬としてカプトプリル(CAPT)、キモスタチン(CHYM)、アプロチニンを用いてそれぞれの産生経路についても検討した。 結果;CPAE,PAECではANGIからIIへの変換能が高く、CAPTで90%以上抑制されたがCHYMでは抑制されなかった。CPAEでの13RSからのあANGII産生能はANGIからの産生能の約15%と低かったがCAPTの影響を受けずCHYMでやや抑制された。A10でのANGIからIIへの変換能はCPAEの場合の約1/10であったがやはりCAPTで抑制された。13RSからのANGII産生能はCPAEの場合よりも高く、この活性はCAPTの影響を受けずCHYMで有意に抑刷された。PASMCでのANGIからのANGII産生能はPAECとほぼ同程度と高い活性を示した。この細胞における14RSからのANGII産生はA10の場合と異なりCHYMに抵抗性を示した。またこの細胞にはKNGからのBK産生能も認められ、アプロチニンで抑制された。 結論;ブタ大動脈由来の細胞においては内皮細胞、平滑筋細胞共にアンジオテンシン変換酵素活性を示した。これらの細胞において、14RSからのANGII産生はCHYMによって抑制されず、ラット大動脈やウシ肺動脈由来の細胞の場合と異なった。従ってANG変換酵素を介しないANGII産生に寄与する酵素は単独ではなく、それぞれの寄与度も種により異なることが考えられた。
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