内皮細胞は、内膜依存性血管弛緩因子(EDRF)やプロスタグランディンI_2(PGI_2)を産生し、血管の弛緩作用や抗動脈硬化作用を示す、自然発症高血圧ラットでは、EDRFの産生が低下し、血管の弛緩が抑制され、血管の収縮性の亢進がみられている。私共は、SHRの大動則により内皮細胞を遊離し、直接内皮細胞の情報伝達機構を検討し、その著しい異常をみとめた。正常血圧ラットWKYとSHR8週齢から大動脈を取り出し酵素法により内皮細胞を遊離・培養した。いづれも蛍光アセチルLDLの取りこみをみとめ、またconfluentでは、cobble stone状配列を示し内皮細胞であることを確認した。内皮細胞の形態は、WKYとSHRにおいていづれも等しかった。また細胞内Ca^<2+>を動員するbradykimin(BK)を用いて情報伝達を検討した。BKの受容体数とKdはいづれもWKYとSHRで差はなかった。しかし、BK10^<ー7>Mに対し、細胞内Ca^<2+>の増加は、SHRで約21%の高値を示した(P<0.05)。またイノシト-ル1.4.5三リン酸(IP_3)も、SHRで8.6±2.8pmol/10^6cellsと60%の増加を示した(P<0.05)。一方、PGI_2の産生は、SHRで約54%低下していた.(P<0.05)。以上より、SHRでは.ホスホリパ-ゼCの亢進とともにPGI_2産生系のホスホリパ-ゼAzの低下がみられ、両酵素系の解離がみられた。これのことはSHRのEDRFの産生低下やエンドセリンの産生異常の機構に関与している可能性を示す.また培養細胞において情報伝達系の異常をみとめたことは、これらの異常が遺伝的に継体されることを意味し、SHRにおける高血圧の発症や血管障害の引き金となる可能性を示す。
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