本年度までに小児腫瘍116検体について、癌関連遺伝子の変異の有無を詳細に検討した。検索した遺伝子は網膜芽腫抑制遺院子Rb、ウィルムス腫瘍抑制遺伝子WT33、形質転換抑制遺伝子Krevー1、転移抑制遺伝子nm23H1の4種類である。検索した小児腫瘍は神経芽腫51例、ウィルムス腫瘍17例、横紋筋肉腫10例、悪性リンパ腫9例、肝芽腫8例、その他21例であった。腫瘍よりDNA、およびRNAを抽出し、Southern or northern blotting法にて変異の有無、遺伝子増幅、発現の状態を検討した。 1.癌抑制遺伝子Rb:神経芽腫39例中1例に、また骨中腫の2例のうち1例に欠損が認められた。我々の解析で成人腫瘍においても、頻度は低いものの幾つかの腫瘍で異常がみられ、Rbは多種にわたる腫瘍に関与していることが示唆された。 2.ウィルムス腫瘍抑制遺伝子WT33:予想に反し、17例のウィルムス腫瘍およびこの遺伝子が関系あるとされる骨肉腫のいずれにも変異は見られなかった。blottingのみでは小さな変異は検出できないが、最近WT33以外の遺伝子がこの腫瘍には強く関連しているとの報告がある。 3.Kーrasにて形質転換した細胞をもとにもどすはたらきのあるKrevー1について神経芽腫培養株6例、ユ-イング肉腫1例でnorthern法にて検討したところ、神経芽腫2株、ユ-イング肉種1株で発現に異常がみられた。Southernで調べると遺伝子の欠損、および遺伝子再構成が新たに発見された。 4.nm23では神経芽腫で遺伝子増幅が検出されたが、RNAの発現には異常なく現在再検討中である。
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