食物アレルギ-の発症に係る卵白アルブミンの抗原決定基の構造に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670479
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 河野 陽一 千葉大学, 医学部・小児科, 助教授 (60161882)
• キーワード: 食物アレルギ- / 卵白アルブミン / 抗原決定基 / IgG抗体 / IgE抗体 / 抗体特異性 / 蛋白高次構造 / 蛋白一次構造

研究概要

食物アレルゲンには数多くの抗原決定基が表現されており、それぞれは異なった機能を持つ免疫担当細胞により認識される。そこで、食物アレルゲンにより感作される機序を解明するには、アレルゲンの抗原決定基を明らかにし、それぞれの抗原決定基に対する免疫応答の機構を解析していく必要がある。今回、卵白アレルギ-の主要抗原である卵白アルブミン(ovalbumin:OVA)に対するアレルギ-疾患者の血清IgG抗体およびIgE抗体の特異性を解析した。物理化学的変性OVAと酵素処理OVAフラグメント用を用いた研究結果を以下にまとめる。(1)物理化学的変性OVAとして、加熱(100℃、3分間あるいは80℃、30分間)、アルカリ(NaOH) dithiothreitol(DTT)、sodium dodecyl sulfate(SDS)、尿素、酸(HCl)により変性したOVAを用いた。(2)酵素処理OVAフラグメントは、Staphy lococcus aureus由来V8 proteaseについてOVAを処理し、ゲルクロマトグラフィ-により精製した。(3)物理化学的変性OVAおよびOVAフラグメントに対する患者IgGおよびIgE抗体の結合能をELISA法により測定し、未変性OVAに対する抗体の結合能と比較した。(4)変性OVAに対するIgGおよびIgE抗体の結合能が、未変性OVAに対する結合能と異なったことより、これらの抗体の一部は、OVAの高次構造を認識していることが示された。(5)変性OVAおよびOVAフラグメントに対して、IgGおよびIgE抗体は異なった結合能を示した。すなわち、IgG抗体とIgE抗体のOVAに対する特異性が異なることが示され、IgG抗体とIgE抗体の認識するOVA抗原決定基が違うことが強く示唆された。これはOVAに対するIgG抗体とIgE抗体の産生機序が、相違していることを強く示唆している。(6)現在、IgG抗体とIgE抗体が認識するOVA抗原決定基をOVA蛋白一次構造をもとに決定する研究を進めている。また、OVAに特異的なT細胞株が樹立され、その機能についての解析を進めている。

研究成果

• [文献書誌] 本間 季里: "IgGおよびIgE抗体により認識される卵白ウルブミン,オボムユイドの抗原構造について検討" アレルギ-. 40. 1167-1175 (1991)
• [文献書誌] 本間 季里: "卵白アルブミンに対するIgGサブクラス抗体の特異性" 日本小児科学会雑誌. 95. 577 (1991)
• [文献書誌] 青柳 正彦: "オボムユイドの抗原構造:オボムユイドに対するアレルギ-疾患患者のIgG,IgE,IgA抗体の特異性" アレルギ-. 40. 1107 (1991)
• [文献書誌] 本間 季里: "卵白アルブミンに対するIgG4抗体の特異性" アレルギ-. 40. 1115 (1991)
• [文献書誌] 本間 季里: "食物アレルギ-の診断における抗原誘発直腸粘膜細胞診の有用性"
• [文献書誌] 下条 直樹: "カゼイン加水分解乳の抗原性:カゼイン加水分解乳に感作されて消化管アレルギ-反応を呈した症例における感作アレルゲンの検討"
• [文献書誌] Shimojo,N.: "Detection of house dust mite(HDM)ーspecific IgE antibodies on nasal mast cells from asthmatic patients whose skin prick test and RAST are negative for HDM."
• [文献書誌] Shimojo,N.: "Nasal smear mast cells as a marker for diagnosis of respiratory allergy"
• [文献書誌] Honma,K.: "Antigenic determinants on ovalbumin:the reactivities of IgE,IgG and IgG subclass antibodies with different ovalbumin preparations"