研究概要 |
食物アレルギーの発症機序を解明する目的で、卵アレルギー患者の血清中に存在するIgG抗体、IgE抗体、およびIgA抗体、そしてIgGサブクラス抗体が認識する卵白アルブミン(ovalbumin:OVA)の抗原構造を解析した。OVAは、卵アレルギーの発症に関わる主要アレルゲンである。この研究により以下の結果を得た。1.V8protease処理OVAフラグメントに対するIgE抗体、IgG抗体およびIgA抗体の結合能に違いが認められた。これより、OVAに対するIgE抗体とIgG抗体あるいはIgA抗体の特異性が異なることが強く示唆された。2.物理化学的処理により高次構造を変化させた変性OVAに対して、抗OVA IgA抗体は、抗OVA IgG抗抗体やIgE抗体とは異なった結合能を示した。これより、1.の結果と同様にIgA抗体のOVAに対する特異性は、IgE抗体やIgG抗体と異なることが示唆された。また、IgA抗体は、処理によりフラグメント化した変性OVAに対しても高い結合能を示したことから、OVAの一次構造を主に認識していると考えられた。3.卵アレルギー患者のOVAに対するIgG抗体のサブクラスは、主にIgG1とIgG4であることが示された。変性OVAおよびOVAフラグメントに対する患者の抗OVA IgG1抗体とIgG4抗体の結合体の違いから、その特異性が異なっていることが示唆された。4.Western-blot法を用いて患者のIgEa抗体が反応するV8 protease処理OVAフラグメントを検出した。その結果、IgE抗原決定基の1つを含む分子量10,000のOVAフラグメントが明らかとなった。
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