研究概要 |
無(低)ガンマグロブリン血症には数多くの病型がみられ,またその病態も複雑多岐にわたる。これらの一部の病態は免疫学的・遺伝子学的に解明されつつあるが,その詳細は未だ明らかでない。今回,個々の病型の成立機序を明確にし,予防や治療に寄与するためにB細胞に焦点をあて,その活性化,増殖,分化の異常と免疫グロブリン遺伝子とその発現の異常を遺伝子学的・生化学的に明らかにし,さらにそれらの異常の異質性の存在を明確にすることを目的とした。その結果下記の点が明らかになった。 (1)免疫グロブリン遺伝子の発現異常に関して (1)Common variable immunodeficiencyでは,免疫グロブリン遺伝子の再構成(VDJ領域)の異常によるもの,クラススイッチの異常によるもの,mRNAへの転写異常によるものが存在し,異常の多様性が明らかになった。さらにクロマチン構造の異常によるものも存在した。 (2)Bloom症侯群における低IgM血症では,膜型μ鎖遺伝子の発現は正常であるにもかかわらず,分泌型μ鎖遺伝子の発現が低下していることから,IgMのH鎖の遺伝子からのスプライシング機構の異常が考えられた。この機序についてはさらに塩基配列を検討中である。 (3)選択的IgA欠損症では,α鎖遺伝子へのクラススイッチの異常が明らかになった。 (4)Wiskott-Aldrich症侯群における低IgM血症では,γ鎖へのクラススイッチの亢進が重要な機序と考えられた (2)B細胞の活性化・分化・増殖における異常に関して Commen variable immunodeficiencyをはじめとして無(低)ガンマグロブリン血症を呈するものの中に,B細胞の活性化・分化異常を呈するものが存在し,特にC-myc遺伝子発現低下を示すものが存在した。
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