研究概要 |
二次癌発生のリスクが極めて高いとされる攻撃的癌化学療法後の,小児悪性腫瘍患児について,HGPRT座の体細胞突然変異を検討した。主として本院に於て,癌化学療法を終了,完全寛解を維持している1歳〜23歳の悪性腫瘍患児82名を対象とした。末梢血リンパ球を採取後,PHA及rILー2を添加培養し,6ーチオグアニン(6ーTG)添加・無添加の状態で,細胞をクロ-ニングした。2週間後,両者のコロニ-数をカウントして,HGPRT座突然変異頻度(Mf)を算出した。正常成人では,Mfは10^<-6>〜10^<-5>の範囲内で,平均は3×10^<-6>であった。ALLや悪性リンパ腫の患者の中には,Mfが10^<-5>を越え,10^<-4>に達するものが見られた。AML患者のMfは,すべて正常範囲内であった。これらMfが高値の例の多くは,治療終了後数年を経過しており,変異がstem cellレベルで生じていると考えられた。次に患児より得られた,6-TG resistant cloneのHGPRT geneをPstーI digestionによるサザンブロット法で検討した。RFLPに変異の見られないもの(Point mutation)が約3/4であったが,一部exonに欠損,変異のあるものが20%近く存在した。一方,健常人に見られる欠損頻度は,10%以下で,化学療法が体細胞突然変異を誘発している可能性が示唆された。同時に行った変異クロ-ンのT cell receptorの,rearrangementの解析から,得られたクロ-ンの殆どが異なるclonalityを持つことが判明した。今後更に,同一患児のMfの経時的測定(化学療法中も含めて),HGPRT以外のlocus例えば,赤血球Glycophorin Aや,HLA座の変異頻度をあわせて比較検討し,癌化学療法後の体細胞突然変異の機構を解析したい。
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