対象となる言語発達障害児は、米子保健所および松江整肢学園にて集積中である。今年度は、機能性構音障害を有している幼児のうち明らかな精神遅滞を除く10名につき、随意運動発達と構音障害との関係を分析した。その結果、口腔内の随意運動の遅れよりも躯幹・上下肢の随意運動の遅れが顕著であった。これまで機能性構音障害では、知能と有意に関連していることが知られており、知能低下群から知能正常群へと移行するにしたがい、構音障害の発生率は低下していく。しかし、正常知能群においても数%の発生率があり、知能のみが幼児の構音獲得を規定している因子ではない。今回の結果から、新たに知能以外の因子として、躯幹・上下肢の随意運動発達の遅れが指摘された。幼児では、構音を獲得するといった言語的な発達においても、身体の随意運動発達と関連することが示唆され、小児の発達障害は、単一な因子のみでは規定されないということを示していると考えられる。 さらに既往歴をみると1歳から3歳の間に、言語理解は良好であるのに、言語表出が不良であるものが多かった(70%)。言語理解良好、知的な理解力が正常であることで示されているように、今回の対象児では外界からの刺激や情報を受容し、処理する能力系に遅れはなく、言語表出・構音・身体の随意運動といった自己内部で処理されたものの表出系に遅れが存在すると考えられる。これは、発達期にある脳のあるシステムの成熟が遅れていることを推測させるものである。 学童期になってから顕在化する文字言語の発達障害についても、幼児期より発見に務める必要がある。現在、タキストスコ-プを利用した視覚知検査を試案中である。
|