対象と方法:6名のうっ血性心不全(以下、心不全)小児(年齢範囲:1ケ月〜4歳)を対象とした。Mモ-ド心エコ-法により心不全の程度を把握した後、肘静脈よりヘパリン採血し、リンパ球交感神経β受容体数(以下、β受容体数:fmo1/mg蛋白)および赤血球膜ナトリウムポンプ受容体数(以下、Naポンプ受容体数:nmol/l cells)を、それぞれ ^3H‐dihydro‐aloprinolあるいは ^3H‐ouabainを用いるcompetitive binding assay法で測定した。その後、ジギタリス療法を開始し、病態が安定した時点で、血漿ジギタリス濃度、β受容体数およびNaポンプ受容体数を測定した。成績は平均値と標準偏差で示し、t検定で二群を比較した。また、各因子間の関連は、単相関係数により検討した。 成績:1)心不全小児は、同年齢の健常小児(n=12)より有意に低いβ受容体数を示した(8.6±3.4対16.3±5.1、P<0.01)。ジギタリス療法によりβ受容体数は有意に増加したが(12.9±4.7、P<0.01)、健常小児と比較すると、有意ではないものの、依然低値であった(P>0.05)。ジギタリス療法前後の成績を一つにまとめると、β受容体数は心駆出率と有意の正相関を示した(df=10、r=6111、P<0.05)。2)Naポンプ受容体数は、心不全小児が同年齢の健常小児(n=24)より低値を示したが、有意差はなかった(6.9±2.7対7.4±2.1、P>0.05)。また、ジギタリス療 法によりNaポンプ受容体数は有意に減少したが(4.2±1.3、P<0.01)、血漿ジギタリス濃度とは相関しなかった(df=4、r=-0.5489、P<0.05)。 結論:β受容体数は、心不全の程度およびジギタリス療法の効果を反映するので、病態の把握に有用と考えられた。一方、Naポンプ受容体数は必ずしもジギタリスの効果を反映せず、「Naポンプ受容体数によりジギタリスの効果が異なるのではないか」という初期の予測を裏づける成績は得られなかった。
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