研究概要 |
IgA腎症の実験モデルを作成する目的で、マウスにウイルスを接種して、組識学的ならびにウイルス学的検討を行なった。腎炎作成のために、4週齢マウスにCox.B4 virusを1カ月間隔で5回静脈内接種した。最終接種1カ月後(6カ月齢)より1カ月間隔で12カ月間にわたり腎および血液を採取した。腎は光顕(HE,PAS,Azan染色)、蛍光抗体法(IgG,IgA,IgM,C3,virusーAg)および電顕にて検討した。血液はウイルスの中和抗体価と血清IgG,IgA,IgM値を測定した。メサンギウムの増殖ならびに同部へのPAS陽性沈着物は、検討の終了した10カ月齢まで増強した。蛍光抗体法では6カ月齢はIgG優位でmesangial patternに染色されたが、8,9カ月齢になるとIgAが同等あるいは優位となり、以後は常にIgAが同様染色態度で優位に染色された。virusーAgは10カ月齢まではすべて2(+)で、変動は見られなかった。電顕では光顕でのPAS陽性沈着物に一致してメサンギウム領域にelectron dense depositsが認められ、一部内皮下および上皮下にも存在した。血清IgG,IgM値は、コントロ-ル群に比較して常に高値であり、加齢とともに上昇した。血清IgA値は、コントロ-ル群が加齢とともに上昇するのに比し、7カ月齢以降急速に上昇し8カ月齢でほぼ最高値となり、以後ほとんど変動を示さなかった。ウイルス抗体価は、11カ月齢まではゆっくり上昇した。以上から、ウイルスの遷延感作によってIgA腎症とほぼ同様の腎炎が生ずることが明らかとなり、実験モデルとしての可能性が高まったものと考えられる。
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