研究概要 |
マウスにウイルスを接種した動物実験系を用い,ウイルスの動向を明らかにする目的で,組織学的ならびにウイルス学的検討を行なった。マウスに血清無添加培養Vero細胞で増殖後精製した10^7TCD_<50>のCox.B4 virusを静脈内接種し,接種後6時間から28日まで腎を採取し,in situ hybridizationおよび間接蛍光抗体法によって,ウイルスRNAとウイルスの表面蛋白の局在を検討した。in situ hybridizationは,Cox.B4 virus感染マウス腎を凍結薄切切片を用い,エタノールとアセトンにて固定した後,digoxigeninでラベルしたcDNA probeで行なった。その結果,接種後6時間で最もシグナルの増強を認めたが,弱いながらも接種後28日でも陽性であった。間接蛍光抗体法は,Cox.B4 virus感染マウス腎を凍結薄切切片を冷アセトンにて固定し,FITC標識抗マウス血清を用い,IgG,A,M,C_3を直接法で、Cox.B4 virus Ag.を間接法にて検索した。その結果,IgG,A,M,C_3は何れの時期にも陰性であったが,Cox.B4 virus Ag.は接種後6時間で最も強くメサンギウムに染色され,接種後28日においても染色強度は低下するものの,同様の場所に陽性に認められた。以上のことより,ウイルスRNAとウイルスの表面蛋白の局在が明らかとなり,また長期間にわたりCox.B4 virusは,腎臓組織に存在し続けるということが知られた。この事実は,本ウイルスはそのままの形で腎臓に長時間局在し得ることを,示唆するものであり,少数回の感染によって腎臓において常時抗原の提供を行ない,その場での免疫複合物の産成に寄与する可能性が大であるものと考えられた。
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