研究概要 |
本年度は.低酸素症による新生仔脳出血マウスにおいてその血液ガスと脳細胞内組織pH(pHi)をリン核磁気共鳴法(MRS)を用いて比較することによって、低酸素症に伴うアシド-シスに対する新生児脳神経細胞の防御反応を検索した. ^<31>P MRS(JEOL SCMー200 spectrometer)の測定には、生後0ー1日のJcにICR系マウスを密閉容器に入れ,頭部が表面コイルに密着するように個定した。room airにて負荷前の測定後.5%酵素ー95%窒素混合ガスによる8時間の低酸素負荷を行い.その間のスペクトルを連続的に測定した.その後再びroom airにて蘇生し、蘇生3時間後まで測定した。MRSの測定は繰り返し時間2.0sec.積算回数1800回,RFパルス幅9μsecで行なった。混合動静脈pH(pH6)の測定は密閉容器にマウスを入れて同様の負荷を行い.1時間間隔で各々5匹の生存マウスを断頭して30μlの混合動静脈血をヘパリン処理した毛細管に採取し、pHを測定した。負荷後生存していたマウスについても、1時間間隔で蘇生3時間後まで測定した。 ^<31>P MRSの測定では20匹中11匹が生存し、生存例では負荷1時間後pHiは7.20±0.03から7.36±0.03まで有意に上昇し.その後徐々に低下したが.負荷終了時に於いても負荷前値より高かった。蘇生後も一旦上昇傾向を示した。pHbは負荷前値7.39±0.01から負荷開始後徐々に低下し、負荷終了時には7.16±0.01であった。以上の結果から、体アシド-シスが存在している時に、新生仔脳ではアルカロ-シスを来たす場合があることが初めて実験的に示され、新生仔脳には体アシド-シスに対する何らかの保護機構が存在する可能性が示唆された。そしてまた、仮死児に対しては通常、アシド-シスの補正のために重炭酸ソ-ダが投与されるが、低酸素症における脳神経細胞の防御を第1に考えるなら、アシド-シスの補正のための重炭酸ソ-ダの投与は問題が存在する可能性が示唆された。
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