これまでの実験では、細胞内伝達機構としてのイノシト-ルリン脂質代謝(PI)の潜在活性は、生後1週から2週目に強く、3週から4週目には低下することがわかり、この反応の変化はnonーNMDA受容体の生後発達を反映しているものと考えられた。また、嗅内野での誘発電位の検討による興奮性反応の持続時間を表すと考えられる半値幅も、生後1週から2週目に大きく3週から4週目には減少することがわかり、この半値幅の増大は、神経線維の興奮伝達の同期性のちがいを反映している可能性と、NMDA受容体の生後発達を反映している可能性が考えられた。誘発電位の半値幅に関しては、さらにNMDA受容体の拮抗剤を投与して検討していく予定である。以上のようなキンドリング刺激を加えていない状態での興奮性伝達機構の生後発達を明かにしたうえで、PI turnoverと誘発電位に及ぼすキンドリング刺激の影響を検討する。 一方、上記の実験以外に、成熱ラットの扁桃核キンドリンクモデルにおける嗅内野での誘発電位の変化に及ぼすNMDA受容体の拮抗剤の効果と検討し、キンドリングを形成するために用いられる頻固刺激中の誘発電位にNMDA受容体に依存する成分が存在し、後発射の発現と密接に関係している事を明らかにした。今後、抑制系との関係も含め、さらに研究していく予定である。
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