研究概要 |
平成3年度から本研究費の助成を受け、フエニルアラニン(Phe)水酸化酵素の補酵素であるテトラヒドロビオプテリン(tetrahydrobiopterin,BH_4)の遺伝的代謝障害症、即ち、BH_4欠乏症の研究を行い、昨年度までにBH_4を直接分析する系を開発するとともに、髄液中のBH_4を分析する系を確立した。体液中のBH_4分析は、低Phe食治療が無効で特殊な薬物療法を必要とする本症をPhe水酸化酵素の異常症であるフエニルケトン尿症から鑑別するために不可欠な手技であり、本年度はBH_4の簡便な分析法の開発を試みた。即ち、濾紙尿によるBH_4の分析を行ったが、濾紙に予めアスコルビン酸を噴霧しておき、それに尿をスポットし、風乾後、ドライアイス中に保存した場合には、その中のBH_4の分析は可能であった。しかし、室温保存の尿では、BH_4が分解してしまい、採尿2〜3日でその分析は不可能となった。尿中BH_4の分析には、採尿後アスコルビン酸を加え、直ちに凍結保存した尿が必要と結論された。次に、新生児スクリーニングで発見されたBH_4欠乏症4例の長期予後について検討した。即ち、外来性に投与したBH_4が再利用可能な病型、PTPS欠損症と、再利用できないDHPR欠損症では、同量のBH_4を与えた場合、前者の体液中ではBH_4が容易に検出されるのに対し、後者では速やかにBH_4が消費されてしまうことが示された。しかし4〜5mg/kg/日のBH_4に加えて、神経活性アミン前駆体であるL-Dopa,5-OHTを与えることにより、いずれの病型でも神経合併症を予防可能なことが明らかにされた。
|