研究概要 |
平成5年度は腎機能低下を伴う小児期発症の逆流性腎症例(9例,男女比=6/3,Ccr;7〜54ml/min/1.73m2,平均観察期間;5.4年)を対象に進行性腎機能障害の臨床的危険因子の解明を模索し,以下の結果を得た。 1.尿蛋白量(早朝尿の尿蛋白量/尿クレアチニン) 腎機能を血清クレアチニン値の逆数(1/血清Cr)で表すと尿蛋白量と有意の負の相関を認める(腎機能の低下とともに尿蛋白排泄量が増加する)。 2.尿蛋白分析(SDS‐PAGE) 1/血清Crの経時的変化の一次回帰直線の傾き(勾配)が緩徐な群(進行緩徐群;5例,DELTA1/Cr<0.05/年)と進行群(4例,DELTA1/Cr≧0.05/年)に分けると,進行群では進行緩徐群に比してアルブミン(分子量6.7万)排泄が少なく,高分子(6.7万以上)および低分子蛋白尿(4万以下)の排泄が有意に多い(進行群では非選択性の蛋白尿である)。 3.蛋白制限食,高血圧 ・蛋白制限食が遵守されている群(4例)ではそうではない群(5例)と比して1/血清Crの傾きが有意に緩徐である。 ・経過観察中平均血圧が低下した群(4例)と不変あるいは上昇した群(5例)の比較では,平均血圧低下群が不変あるいは上昇群に比して1/血清Crの傾きが有意に緩徐である。 ・蛋白制限食下で血圧正常群(3例)と非制限食下で高血圧群(3例)の比較では,前者が後者に比して1/血清Crの傾きが有意に緩徐である。
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