研究課題/領域番号 |
03670516
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研究機関 | (財)東京都臨床医学総合研究所 |
研究代表者 |
桜庭 均 東京都臨床医学総合研究所, 臨床遺伝学, 研究員 (60114493)
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研究分担者 |
石井 達 東京都臨床医学総合研究所, 臨床遺伝学, 研究員 (00222935)
加瀬 良一 東京都臨床医学総合研究所, 臨床遺伝学, 研究員 (20150203)
伊藤 孝司 東京都臨床医学総合研究所, 臨床遺伝学, 研究員 (00184656)
大島 章弘 東京都臨床医学総合研究所, 臨床遺伝学, 研究員 (20203763)
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キーワード | 先天代謝異常症 / ファブリ-病 / αーガラクトシダ-ゼ / 遺伝子大量発現 / バキュロウイルス / 酵素補充療法 / 遺伝子解析 |
研究概要 |
先天代謝異常症の分子レベルでの病態を明らかにすると共に、本格的な酵素補充療法を開発するために、ファブリ-病をモデルとして、その欠損酵素であるヒトαーガラクトシダ-ゼの大量発現系の作製を試みた。発現系としては、糖蛋白産生に適したバキュロウイルス/昆虫細胞系を用いた。正常ヒトαーガラクトシダ-ゼのcDNAを組み込んだリコンビナントウィルスを昆虫由来のSf9細胞に感染させると、αーガラクトシダ-ゼ酵素蛋白が培地中に増加し、培地100ml(2×10^8細胞)当たり0.5〜1mgのαーガラクトシダ-ゼが産生された。この発現系では、培地への酵素排出が可能なため、αーガラクトシダ-ゼは、3種のカラムクロマトグラフィ-操作のみで、容易に精製された。この精製酵素は、分子量44kDaで、そのアミノ末端のアミノ酸配列を決定したところ、最初の50残基がヒト肺αーガラクトシダ-ゼのそれと完全に一致した。従って、本遺伝子大量発現系で作られたαーガラクトシダ-ゼは、ヒト細胞で作られた酵素と同様にシグナルペプチドの切断が起っている事が判明した。至適pHやKm値などの酵素学的性質は、ヒト臓器由来の酵素のそれと差がみられなかったが、ゲルろ過による実験で、組み換えαーガラクトシダ-ゼは単量体として存在する事が示され、ヒト臓器由来のそれが2量体として存在する事との間に差異がみられた。組み換えαーガラクトシダ-ゼをファブリ-病患者由来の線維芽細胞の培養液中に加えると、時間経過と共に、細胞のαーガラクトシダ-ゼ活性の増加が認められた。そして、2日後には正常の36%の値に達した。今後、ファブリ-病での主な障害組織である血管系への酵素の取り込みを増大させる事で極めて有効な治療法の開発が期待できる。また、ファブリ-病の臨床表現型を決定する遺伝子変異を同定したが、その変異蛋白の発現により詳細な病態の研究が可能になった。
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