1)ウシのレンズより精製したαAクリスタリンとαBクリスタリン、およびそれぞれのC末端10ペプチドを抗原として、ウサギで抗血清を作製し、それぞれの特異抗体を精製した。これらの抗体を用いてαAおよびαBを特異的に測定できる高感度サンドイッチ型の酵素免疫測定系(EIA)を確立した。最少測定感度は10pgであった。 2)αAおよびαBの測定系を用いてラット非レンズ組織における両クリスタリンの分布を測定した。αBは骨格筋、心筋、腎に多く、神経組織にも存在することを、はじめて定量的に明らかにした。神経組織のαBは、ラットでは神経系の分化がほぼ完了する生後5週ごろから増加しはじめることが分かった。一方、レンズだけに限局するとされていたαAが脾胸腺などのリンパ組織で検出定量された。脾のαA免疫活性を抗体カラムを用いて精製し、脾のαAが(ラット)レンズのαAと同じ蛋白質であることを示唆する結果を得た。 3)ヒト骨格筋よりαBクリスタリンを精製した。外科手術の際に切除された胸筋中のαB免疫活性を精製し、電気泳動上単一バンドを示す標品を得た。これをウシレンズのαBと比較検討し、レンズで発現しているαBと同一蛋白質であることを証明した。さらに、途中までαBと同時精製されてくる蛋白質が低分子量熱ショック蛋白質(HSP28)であることが分かり、これもヒト組織よりはじめて精製した。 4)GAー1ラットグリオ-マ細胞株を用い、αBが熱ショック蛋白質の一つであることを証明した。 5))アレキサンダ-病患者剖検脳でαBが異常蓄積していることを確認すると同時に、αBのmRNA量が増加していることを明らかにした。また、髄液中のαBの測定が可能になり、アレキサンダ-病の生前診断のためのスクリ-ニングを開始した。
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