研究概要 |
非レンズ組識に存在するαクリスタリンを研究し、以下の成果を得た。 1)αAおよびαBクリスタリンの高感度イムノアッセイ系を確立し、両クリスタリンのレンズ外組識における分布を明らかにした。αBのみならずαAも脾臓、胸腺などに存在することを見つけた。 2)筋肉中に多く存在するαB免疫活性をヒト骨格筋より精製したところ、分子量約2.8万の蛋白質も同時精製され、これが低分子量ストレス蛋白質HSP28であることを同定した。また、HSP28のイムノアッセイ系も確立し、αBとHSP28が細胞内で複合体を形成していることを証明した。 3)同じ方法で、ラット骨格筋からHSP27を精製し、ラットHSP27のイムノアッセイ系も確立した。 4)ラットグリオーマ細胞(GA-1)およびヒトグリオーマ細胞(U373MGおよびU118MG)を使い熱ストレスおよび亜砒酸ナトリウム,エタノールなど種々の化学ストレスに対するαBクリスタリンとHSP28の応答をイムノアッセイ法およびNorthernブロット法にて調べたところ、両蛋白質は同じように反応し、αBクリスタリンは低分子量ストレス蛋白質の一つであることが明らかになった。また、両蛋白の応答は、熱ストレスの場合と化学ストレス(亜砒酸ナトリウム)の場合で異なり、ストレスの対する応答機構が単純ではないことが示唆された。 5)ラットを42℃/15分間温浴させると、神経組識、肝、副腎、脾、脂肪組識などで、HSP27の誘導が見られ、基本的には培養細胞系での応答と一致した。しかし、αBクリスタリンの応答は、肝、脾、副腎などで顕著に認められたが、中枢神経系などでは誘導されなかった。 6)アレキサンダー病患者脳ではαBクリスタリンのmRNAの発現が高進していることを明らかにした。又、患者髄液中ではαBクリスタリンとHSP28の濃度が増加していて、生前診断への有用性が示唆された。
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