研究概要 |
1.〓痒性皮膚疾患における神経線維の病理学的変化 神経線維蛋白に対する特異的抗体であるPGP9.5抗体を用いた組織化学染色を行ったところ,〓痒を伴う代表的疾患である痒疹では,正常皮膚に比べて表皮内および真皮乳頭層における神経線維の著明な増加が認められた.乾癬では,一般に表皮内の神経線維は減少しており,真皮乳頭層では増加していた.〓痒を伴う乾癬皮膚と〓痒を伴わない乾癬皮膚での差は認められなかった. 痒疹,乾癬はともに表皮肥厚を伴うが,神経線維の動態は異なっていた.表皮内の神経線維の増殖は表皮細胞のturnoverと関連するのかもしれない.すでに神経線維の分布変化と〓痒の関連性が指摘されているが,われわれの研究ではこの点をあきらかにできなかった.神経線維の病理学的変化は二次的な現象かもしれない. 2.〓痒性皮膚疾患における紫外線の奏効機序 紫外線療法は,アトピー性皮膚炎,人工透析に皮膚〓痒などに奏功するが,その作用機序は局所的な機序と全身的な機序によることがわかった. 局所機序としては,紫外線照射は適当な照射量の範囲内ではマスト細胞の脱顋粒現象を抑制した.また,紫外線は神経線維に対する抗PGP9.5抗体の染色性を著明に抵下させた.全身機序としては,マスト細胞からのヒスタミン遊離を促す血清因子(人工透析患者)に働いて,これを不活化することがわかった. これらの作用機序が皮疹の軽快に結びつくのか,逆にときに経験する紫外線による増悪機序に関係するのかは即断できない.
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