1:ヒト真皮メラノサイトが成人正常皮膚に存在することを電顕的に明らかにしたが、その分布密度はきわめて低くその定量的検索法はなお検討中である。 2:高齢者上背部メラノサイトーシス(仮称)の存在を提唱してきたが、本年度8例を収集し、論文にまとめた。いずれも男性例で、高齢になりその色調が臨床的に出現してきた。光顕的にアミロイドなどの沈着など見られず、線維細胞様細胞が色素を有しており、電顕的にこれら細胞は真皮メラノサイトの条件を備えた細胞であった。なお高齢に伴う間質の変化や内分泌環境の変化との関連を検索中である。今後このメラノサイトの存在あるいは出現の意義についても研究を継続していく。 3:ヒト真皮メラノサイトの特徴のひとつは細胞の周囲に観察されるextracellular sheathであるが、この性状についてはまったく不明であった。今回われわれはこのsheathの主たる成分がVI型コラ-ゲンであることをはじめて見いだした。これはVI型コラ-ゲン・モノクロナ-ル抗体を用いた免疫組織学ならびに免疫電顕にを用いて観察した結果にもとずくものである。 4:真皮メラノサイトの増殖について:BrdUモノクロ-ナル抗体を用いて観察中であるが未だ陽性細胞を見いだし得ない。本細胞の分裂能力はきわめて低いと思われる。なお同じ真皮に存在する母斑細胞においては陽性細胞が観察され、また電顕的にも分裂像を見いだしたので、メラノサイトについてもさらに追求する必要があるとおもわれる。
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