1:ヒト真皮メラノサイトが成人正常皮膚に存在することを電顕的に確認した。本細胞のextracellular sheathの主要な成分はIV型コラーゲンであることを免疫電顕的に観察した。 2:このメラノサイトと区別不能な細胞が、リンパ節に存在することを免疫組織学的・電顕的に見いだした。この結果真皮メラノサイトはさらに広範な臓器間質に分布している可能性を示唆しており、その概念から本細胞を間葉メラノサイトと呼び、さらに分布状態を検索していく予定である。 3:「高齢者上背部メラノサイトーシス」を新しい疾患概念として報告したが、その後も症例を集積している。この論文についてはFitzpatrickが本年度Year Bookに紹介し、new typeのdermal melanocytosisであると評価してくれている。また本疾患の真皮成分ないし内分泌環境の関与を検索中であるが、なお明らかな相関関係因子を見いだせなかった。今後さらに検討していくつもりである。なお、甲状腺機能異常に合併した同様症例の報告がなされ、その可能性が示唆されてきた。 4:家族性眼瞼色素沈着症periorbital hyperpigmentationが従来より知られているが、今回本症がdermal melanocytosisであることをはじめて見いだした。このことについてもさらに研究していく。 5:サル(カニクイザル)皮膚及びヒト青色母斑などで、血管とメラノサイトの関係を免疫組織学的に検討し、いずれも静脈周囲にメラノサイトの分布密度がきわめて高いことを明らかにした。 6:抗c-kit抗体を用いた検索では、真皮メラノサイトは陽性所見を得られなかった。今後胎児期のそれについて検討を続行する。Late-onset dermalmelanocytosisの概念が確立しつつある。その発現機序・意義などを明らかにし、治療上の開発を目的として今後も研究を継続していきたいと願っている。
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